「……知らない天井だ」

 そんなベタなボケをぶちかますほど、寝起きの俺は混乱していた。







裸の美女

                                                   written by まちす







 起き抜けの独り言通り、今俺の目に入っているのは知らない天井。
 ついでに寝ているのは高級そうなベッド。
 更に隣には、裸の美女。

「って、んな訳あるかい……」

 思わず自分で突っ込んでしまう。
 起きようにも体が動かない。右腕が重い。まさか本当に裸の美女が?
 確認するのが、怖い。


   だから目の前には、知らない天井。

「美女だったら嬉しいような、怖いような。でももし、ア○○だったら……。いや、そんなはず無い、無いよね、あってたまるかー!!」

 思わず絶叫。嫌なことは忘れよう。……忘れてやる。

「……んー」

 隣から悩ましげな声。やばい、裸の美女(予想)が、目を覚ました。

 ……ア○○じゃなかった……ほんとに良かった……。

 それは置いといて、隣の裸の美女(願望)は誰?
 とりあえず、声はなかなかいい感じだ。
 この調子で、顔と体と、ついでに性格もいい裸の美女(妄想)だといいなぁ。
 まぁ無理だろうけど。…とりあえず命が助かれば……それでいいか。

「んー。……もう朝なの。まったく、ほとんど寝てないじゃない……」

 あぁ。神は我を見捨てたり。
 声と顔と体はいいけど、性格がアレな裸の美女(決定)だ。
 絶体絶命、俺。

「まったく。朝っぱらから大きな声、出さないでよね。みんなまだ潰れてるだろうし」

 あれ、パンチが飛んでこない。いつもなら問答無用で、宙を舞ってる頃なのに。
 もしかして寝ぼけてる、のか?

「……なら今が脱出のチャンスか……」
「何が脱出のチャンスですって?」

 ―――聞かれてたんかい。……あぁ今度こそ終わった。

 ―――死刑決定―――そんな言葉が頭をよぎる。


「おはよ、横島君」

「あ、と。おはようございます」

 覚悟を決めて、隣を見る。
 隣には裸の美女。

 その素晴らしい肢体をシーツにくるませ、ちょっと赤くなった顔で、俺を見ている
 裸の美女

「えっと、なんで?」

 この一声に、とたんに機嫌が悪くなり、すぐにも泣き出しそうな
 裸の美女

「……覚えてないの?」

 泣きそうな彼女の声に、罪悪感。
 必死に記憶を手繰り寄せる。

 確か昨日は、冥子ちゃんの家でクリスマス・パーティー。
 二次会は、美神さんの事務所。
 いつの間にか入ったアルコールで、俺と美神さんを除いて全滅。
 んで、その後は……。

「どう。思い出した?」

 恥ずかしそうな、嬉しそうな声。
 真っ赤な顔で、こちらを見ている
 裸の美女

 その表情に、一気に記憶が蘇る。

 思い出したのは

 柔らかく、豊かな、胸
 柔らかな丸みを帯びた、お尻
 すらりとした、肉付きのいい、脚

 そんな、熱く、柔らかな肢体を
 俺の前で見せる
 裸の美女

 鼻にかかった、甘い声
 せつなそうな呼びかけ

 いつもとはまったく違う、声と話し方で
 何度も俺の名前を呼ぶ
 裸の美女

「ふふ。思い出したみたいね」

 えぇ。思い出しましたとも。多分俺の顔は真っ赤だろう。
 そんな俺に、体をすり寄せて話しかけてくる
 裸の美女

「ね。一緒にシャワー浴びない?」

 素肌の感触を素肌で感じて、ドキドキしている俺に、そんなことを言い出す
 裸の美女

「い、いや。それは……」
「いやなの? だめ?」

 いいごもる俺に、楽しそうに話しかける
 裸の美女

「でもこのまんまの格好で行くんすか?」
「大丈夫よ。みんな寝てるし、着替えは準備してあるし」

 恥ずかしそうな俺を見て、してやったりな笑顔の
 裸の美女

「はい。わかりました。お供します」
「ふふーん。素直に言うこと聞けばいいのよ。んじゃ、抱っこ」

「は?」
「抱っこして。お風呂まで」

 いや、それはすごい嬉しいんですけど、なんで?
 イライラしながらも、恥ずかしそうに口を開く
 裸の美女

  「腰、痛いの。……あとなんか、挟まってるみたいで……」

 あぁ、納得。では嬉し恥ずかしながらも、抱っこさせていただきます
 お姫様抱っこされ、嬉しそうに顔をすり寄せる
 裸の美女

「……わかってると思うけど。これから、ずっと一緒だからね」


 そんなこんなで、俺の腕の中には、裸の美女




―――これから、ずっと、一緒に―――







  <完>



    あとがき
 とりあえず、一言。
 この美女ってだれだろう?


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