「横島さんっ! 大丈夫ですか!?」


 それが、バイト先である美神除霊事務所の客間のドアを開け、最初に認識したモノだった。








  「最後に…」

                                                    written by まちす




 


 ドアを開け、おキヌちゃんの声を聞いてからの意識は、はっきりとしていない。体の方は傷だらけだ(いつもの様に)
 気を抜くと手放しそうになる意識に、心配そうなみんなの顔が滑り込む。みんなを安心させるために、声を出してみる。


「だ、大丈……夫……。……ま……ま、だ……」

 ちゃんと声になっているかは分からない。その声帯以上に思い通りに動かない体を引きずりながら、俺は、俺をこんな風にした元凶へと近づく。


「せ、せめ、て……。ひ……ひと……た、ち……」


 せいぜい顔までしか上がらない右手を上げ、悪あがきを試みる。霊力の集中もうまくいかず、「栄光の手」もでない。


   けれども俺は―――

   その右手を―――

   突き出す―――










 ふに(おっぱいタッチ)






 ぽふ(胸に顔をうずめ)






 ぱふぱふ(はふぅ)











「あーっ! えー感触やー!!」
「何さらす、こんクソガキーッッ!!!」


 美神さんの渾身の右が、ボディーに突き刺さる。

「この乳は俺のやー! 絶対離れるかー!!」

 さらに顔をうずめてみる。と、突然。

「よ、横島さん。ダメです。エッチなのはいけないと思います」
「先生ー! 離れるでござるー!」
「コラ! バカ犬! 「狼でござる!」そんなに引っ張ったら、横島がまっぷたつになるでしょっ!」


 三人がかりで引き離されてしまった。

「あぁ。俺の乳が……まだひとタッチしかしてへんのに……」
「まだ言うかー! あたしの乳はあたしんだっ!」


 真っ赤な顔で美神さんが怒る。そない怒らんでもええやん。

「だ、大体。た、タッチだけならまだしも。ぱ、ぱふぱふまで」

 更に真っ赤になる美神さん。なんかいーかも。

「せやかて、ドア開けただけで半殺しにされたんやし。ひとタッチぐらいはえーやないかー」

 そうだ、俺は間違ってない。ブラジャー越しに、乳の感触を味わうくらいは許されて…

「って、なんで下着姿なんすかー!! 美神さん!! こ、これはもう、誘っているとしか!!!」

 はっ、と驚いた顔をし、みるみるうちに全身真っ赤になる美神さん。ふるふる震えて、色っぽい。思わず見とれていると、次の瞬間――

「記憶を失えーい!」

 この日一番のパンチを、頂きました。

 あぁ、今流れているのは鼻血だろうか、それとも違う液体だろうか?
 多分こんな疑問も、記憶に残らないだろう。
 そして俺は、一言残して意識を手放す。



   
  ―― 最後に、もう、ひとタッチ ――








 ― おまけ ―

「ん、もう。あんた達がコーヒーぶちまけるからこんな事に。服は汚れるし、胸は穢されるし」

 どこか幸せそうに、赤い顔をしながらぶつぶつ呟く美神とは対照的に、自分たちの胸を見、

「「「ぱふぱふ」」」

 と、滝涙を流し、呟く三人娘であった。







  <完>



  あとがき
 まちすにとって、記念すべき処女作です。
 正真正銘、生まれて初めて書いたSSなのです。


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