逆行者 第五話

written by まちす




 監視がつく以前まで逆行し、歴史を変える。
 そして、みんなにはどうせ気づかれてるんだから、みんなの前で堂々と時間を越える。
 とてもいい考えだと思うのだが、美神さんは「無理」だと言う。

「……なんでですか?」

 呻くような声で美神さんに尋ねる。  美神さんは「はあーーー」と大げさに感じるくらいの大きな溜息をつき、憐れみのこもった目で俺を見る。

「……あんた、どうやって逆行するっていうの?」
「どうやってって、そんなもん文珠を使えばって……あ゛……」

 そうだよ、そういや今の俺は文珠どころか霊能力なんて全くなかったんだよ。
 せめて、美神さんの記憶だけでも消そうかと思ってたけど、それも無理か…とほほだな。

「それに、今度時間を飛ばれたら、私だけじゃ追いかけられないから勘弁してよね」

 肩を落とし落ち込む俺に、美神さんが釘をさす。
 今ので思い出した、そういえばどうやって俺と同じ時間に飛んだんだろう?
 質問の答えを聞いてなかったな。

「あの、美神さん。質問の答えなんすけど」
「そういや教えてなかったわね。今度は落ち着いて聞いてね」

 ういっす、頑張ります。だからあのこととか、そんなことには触れないでもらえると嬉いっす。

「あんたの、厳密に言うとあんたの周りの霊力が異常なまでに高まっている時。
 恐らくはあんたが文珠をまとめて複数使っているであろう時に、時間を越えようとしている可能性が高い。
 実際にあんたってば、何回か挑戦して失敗してるでしょ?」

 う゛、実は何回か挑戦して失敗してるんだよな。
 最初はアパートぶっ壊して、近所の人たちに大迷惑かけて、文珠で事後処理をしたっけ。
 その後は公園とか、山ん中とかで挑戦したけど失敗続きだったなぁ。

「もしあんたが成功したら、ヒャクメがあんたの跳んだ先を調べて私の能力を使って追いかける。
 ってプランだったのよ。でも事務所で挑戦するなんていい度胸してるわよねー。
 失敗したら、どう責任取るつもりだったのかしら?」

 そう言いながら、んふふーと可愛らしく微笑む美神さん。でもやっぱり目が笑ってなくて怖いっす。
 実は、失敗しても結界がはってあるし、被害は他所でやるより少ないかなぁなんて思ってました。

「せ、成功したんだからいいじゃないですか、ね? ね?」
「―――そうね、事務所で成功してくれたおかげで、人工幽霊一号があんたの跳んだ先を詳しく捉えてくれたからねー。
 その後もやりやすかったわ」

 美神さんの話を聞きながら、すっかり冷めてしまったお茶に口をつける。
 結構念入りに準備してたんだな、みんな。
 美神さんにも言われたけど、帰ったらちゃんとみんなにお礼言わないとな。

「と、まあそういったわけだから、文珠を作れるようになっても、勝手に時間移動したら駄目よ。
 今度は私だって追いかけられないんだからね」
「わかりました。けど美神さんだって時間移動できるんじゃないんですか?」
「まだ、私一人だと上手く飛べないのよ。いつどこに飛ぶかの指定なんてできないし。
 ママなら上手くできるんだろうけどね」

 美神さんもお茶を口にし、「冷めちゃったわね、お茶」なんてのほほんとおっしゃる。

「だから、あんたはやっぱり私の所でバイトしなさい。
 歴史の流れとかは関係なく、事情を知ってる者同士、一緒に居た方が安心できるでしょ?」
「……それはそうなんですけど……一緒に居た方が心強いのは確かですけど……でも……だけど……」
「なによっ! はっきりしないわね、言いたいコトあるんならはっきり言いなさいよ」

 よし、ここは男らしくびしっと言ってやるぜ!

「……あ、あの、時給いくらですか?」
「……250円、と言いたい所だけど。応相談……ね」

 そう言うと、にやりと笑みを浮かべる美神さん。ふ、GS界切っての守銭奴が相手か。
 だがこちらとて、(元)浪花の商人や。なめたらあかんでぇー。

 よっしゃ、銭闘開始や!!


  コメント
 なかなか話が動かないっすね。まあ、解ってたことなんですけど。
 こーゆー話の作り方は駄目よ。……この話はいいのかって? うん、いいの。
 私が気分転換で書いてるやつだから。
 でも一定のクオリティは保ちたい。ディレンマが止まりません〜。


BACKINDEXNEXT
SS TOP