弱々しくタンタンタンと床を叩く俺の両手。
人間の限界以上まで反らされた上半身。
きしんだ音を立てている背骨。
さすが必ず殺す技だけあって、半端じゃないぜキャ○ルク○ッチ。
上半身と下半身がさよならするのが先か、背骨が折れるのが先か非常に微妙なところです。
あ、大穴で頭がすっぽ抜けるってのがあるかも。
……って、そんなんいややー!
せめてもの抵抗にと、ぶんぶんと首を振る。
「……令子、その辺にしてあげたら? その子、死んじゃうわよ」
「ママは黙ってて! 私とこいつの問題なんだから!」
「はいはい。でも一言だけ言わせてね」
美智恵さん、早く。俺の助かりそうな一言を。
娘さんが罪を犯す前に。俺の命の灯が消えぬうちに。
「ショーツ、見えてるわよ。今日はピンクな……」
「なにいっ!? 美神さんのパンティがピンクだとおうっ!」
「なっ!?」
難なくキャ○ルク○ッチから抜け出す俺…なんつーか、俺って時々すごいよな。
勢い良く振り返り、その場にぺたんと女の子座りになっている美神さんを見る。
ずり上がったボディコン服の下には、確かにピンク色のパンティが。
まさか、あの美神さんがピンク色の下着を所持していたとは。
黒とか白、赤にくりぃむれもん色とか持ってるのは確認済みだったけど、まさかピンクとは。
「美神さん。俺は、俺は悲しいっすよ」
「―――は?」
「いつそんな色の下着を買ったんすか!? 俺見たことないっすよ」
「いつだっていいじゃない! いちいちあんたに報告する必要なんて無いでしょっ!」
「だって美神さんの下着見るのなんて俺だけじゃないっすか!」
「うっさい! 見せてるわけじゃなくて、あんたが勝手に見てるだけでしょっ!
見せると見られるが違うって言ったのはあんたじゃない!」
「あっ! そーいや、俺の恥ずかしいところ見てるんだから、下着姿くらいサービスしてくれても」
「あんたは私がシャワー使ってるとこ見てるじゃない!」
力比べをするかのように、両手をがっちりと組み合わせる俺と美神さん。
そのまま唾を飛ばしながら、激しく意見を戦わせる。
内容は他人には聞かせられないけどさ。あほ丸出しだし。
と、それまで口を挟むこと無く、俺たちのやりとりを眺めていた美智恵さんが、やんわりと俺たちの間に割って入る。
「ストップ、ストップ。二人とも、論点がずれて……はいないけど、もうやめたら?
二人の仲が良いのはわかったから」
そういや、美智恵さんがいたんだったよ、すっかり忘れてた。
彼女の言葉に、言い争いをやめる俺と美神さん。
そんな俺たちを見ると、彼女は満足そうにうなずき、言葉を続ける。
「で、令子。この男の子、誰?」
「え? ママ、横島君のこと知らなかったっけ?」
「横島君ていうのね。ええ、知らないわよ」
視線の先の美知恵さんは、嬉しそうにニコニコと俺達を見ている。
本当に知らないのか、はたまた嘘をついているのか。判断に困り、美神さんへと視線を戻す。
と、同じように俺へと視線を向けていた美神さんと視線が合う。なぜか真っ赤な顔になる美神さん。
気がつくと、お互いの息遣いが聞こえそうなほど近くにお互いの顔がある。
こ、これか。や、やばい、たぶん俺の顔も赤いぞ、これ。
視線をはずすタイミングがつかめず、見つめあい続ける俺と美神さん。
二つの唇の距離は近づいていき、やがて……。
コメント
なかなか話が進まない上に、更新送れてごめんなさい。
つーか、これは逆行ものっていうジャンルに入るんだろうか?
ま、ジャンルなんて気にしてないですけど。