じっとりと嫌な汗をかきながら、美神さんを見る。
そんな俺の反応が気に入らなかったのか、元々自分でも恥ずかしいと思っていたのかは分からないが、「ちっ」と舌打ちすると、再び腕組みをして話し始める。
「過去に来た、と言うよりは並行世界に飛ばされた、ってことっすかね」
「みたいね。並行世界にしては、なんだか変なんだけどね」
お互いに顔を見合わせ、大きな溜息。鍛え直しだもんなぁ、体も霊力も。
特に俺はしんどいよなぁ。霊能力を一からやり直しってのは……。
まあ美神さんが事情を知ってて、協力してくれるのは正直ありがたい。
けど監視ってどういうことだ?
「協力してくれるのはありがたいんですけど、監視ってどういうことっすか?」
「監視は監視よ。あんたが変なことしないように、ってね」
ストレートな俺の問い掛けに、同じくストレートな返事を返してくれる美神さん。
って、さっぱり疑問が解消されてないではないか。
「変なことって、するわけないじゃないですか! それに誰に頼まれたんですか?」
「質問は一度に一つよ、横島君。落ち着いてちょうだい」
いきり立つ俺を、憎らしいくらいに冷静に宥める美神さん。
まあ、慌ててもしょうがない、落ち着け、俺。深呼吸、深呼吸。
深呼吸をして、俺が落ち着いたのを確認すると、彼女は一回大きく頷いて口を開く。
渋い表情の前で、右手の人差し指を振りながら話す美神さん。
やっぱり、歴史の流れを変えようとしたのはまずかったか。
だけど、俺だってそれは考えなかったわけじゃない。
「でも、これからの歴史を知ってる俺たちがいる時点で、歴史って変わってません? それにここって純粋な過去じゃないみたいですし、並行世界にしてもなんだか変ですし」
「んー」
俺の考えていた事を聞くと、美神さんは腕組みをして考え込み始める。
彼女は目を瞑り、時折片手で顔を覆うと、なにやら呟き溜息を漏らす。かと思うと、また腕組みをして考えに没頭する。
にしても、この腕組みポーズというのは、なかなかどうして、こう、胸がいい感じで、ねぇ?
考えがまとまったのか、俺には理解できない台詞を残すと、そのまま踵を返し、俺に背を向けてビルへと歩いていく。
その彼女の背中をぼんやりと見ながら、付いていってもいいものか立ち去るべきか考える。
気が付くと、ビル入り口のドアを開けたまま、美神さんが俺を見ている。
俺が気が付いたのが分かったのだろう。
そう告げると、俺の答えを待つことなく建物の中へと姿を消す。
とりあえず、話はしよう。まだ聞きたいこともあるし。
コメント
普通の作品なら、ここまで一話分の構成になるんですよね。
ただ、前編後編だと思えばいいのか?
でも特に二話で一話分とかは考えてないっす。
コンセプトは、『書き手も読み手も肩の力を抜いて』ですので、適当にいきます。
……駄目?